「イースト菌に関する疑問や悩み」を深堀り調査してまとめました。
悩み事
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パン作りにはイースト菌という酵母を使うけど何から出来ているの?
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見た目的に添加物っぽい気がする…食べても大丈夫?
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天然酵母を使ってるパンの方がイースト菌よりも身体に良い?
上記の疑問にお答えします。
パンブロガーのふくともです。手作りパン歴2年、パンシェルジュ検定3級取得の僕から、イースト菌が何モノなのかを優しく解説します。
当記事の内容
・イースト菌に対して抱きがちな勘違い5つ
・自家培養酵母(天然酵母)とイーストで作るパンの違い
僕の身近な人に話を聞くと、イースト菌が何なのか詳しく知らないという人がほとんどでした。知らないまま口にするのって怖い気がしますよね。
当記事を読むことで「イースト菌の正体」や「天然酵母と何が違うのか」を理解することが出来ます。
「イーストを使ったパンの安全性に不安を感じている人」「漠然とイーストを使ってパンを焼いているという人」は覚えておいて損はない内容となっています。
豆知識的な情報ですが、食生活の質向上には繋がるかと思います。どうぞ、ご覧下さい。
イースト菌がパン作りによく使われる理由
イースト菌とは俗に「酵母」と呼ばれる菌類(微生物)です。
市販のパンの食品表示には「パン酵母」と表記されており、原材料として目にする機会は少ないんですが、9割はイースト菌でパンが作られていると思っておいて問題ないです。それくらい広いシェアを誇っています。
残りの1割はパン屋さんなどの専門店で食べられる「自家培養した天然酵母パン」ですね。
身体に良い菌だから?
イースト菌を使うメリット
- 発酵力が強く、大量生産しやすい
- 風味が単一(安定して作れる)
- 入手しやすい
- 乾燥したものがあり日持ちする
とにかく発酵力が安定してるので、パン作りを覚える時はイースト菌で練習するのが鉄則ですね。
当サイトでは、初心者におすすめのイーストの選び方や役割といった情報を紹介していますので、合わせてご覧下さい。
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パン酵母の役割と選び方【初心者はインスタントドライイースト一択】
続きを見る
イースト菌に関する間違えがちな認識5つ【知ってる人は博識】
パン作りをしたことがある人なら一度は聞いたことがある「イースト菌」ですが、具体的に何なのかを理解して使っている人って少ないです。
昔の僕は「化学的に作られた菌なのかな?」と思ってましたが、ただの勘違いでした。アカンですね。
そんなわけで、イースト菌のことを調べて見つけた「意外と間違ってる?イースト菌の5つの事実」をご紹介していきますので、ご覧下さい。
事実1:イースト菌に有毒性はない
菌類って聞くと「カビの仲間は毒がありそう…」と悪いイメージを持たれる人がいるかと思いますが、イースト菌は無毒なので安心して下さい。
たしかに黒カビや赤カビなど有毒な物質を生み出す菌類も存在しますが、無毒で人にとって有益な菌も数多く存在します。麹カビや納豆菌、乳酸菌あたりは超メジャーですよね。
例えば、「植物=毒」というイメージを持っている人っていないと思いますが、実際はトリカブトやアジサイ、漆など有毒な植物って多いです。
Wikipediaの「有毒な植物」の項を見るだけでも、53種類もありました。
それなのに菌類ばかり毒があるイメージを持たれてしまうのは、有毒な菌類が「接触・食品感染で度々問題を起こしている」ことが理由ではないでしょうか。
テレビで集団食中毒とか耳にしますよね。あれは「ウエルシュ菌」という有毒菌が原因で引き起こされるケースがほとんどです。
一部の有毒菌のせいで悪いイメージを持たれてしまっていて、少しかわいそうな気分になりました。
事実2:イースト菌は特定の酵母の名前ではない
「イースト菌」は特定の酵母の名前ではなく、単一の酵母を培養して作ったモノを総じて「イースト菌」と呼んでいるだけなんですよ。
そもそも論ですが、酵母を英訳するとイースト(yeast)なんですよ。つまり、「イースト=酵母全般」という意味なんです。
ちょっとマニアックな話をすると、イースト菌を培養する際はサッカロマイセス・セレビシエと呼ばれる出芽酵母(培養に適した酵母)を使っており、他の酵母が混入しないように無菌室で管理のうえ、糖蜜や麦芽を餌に与えるて育てているんですよ。過保護すぎてビビりますよね。
何気なく使っている「イースト菌」ですが、思っていた以上に手間とコストがかかっていたことに驚きです。
菌を知るうえでおすすめなのが「もやしもん」という菌が主役の異色漫画です。
マニアックな題材にも関わらず、菌がかわいくデフォルメされていてとっつきやすく、菌が及ぼす効果や影響をおもしろおかしく解説してくれるので、難しいなと感じる要素ゼロですよ。
発酵食品やお酒が好きな方は、特に楽しめると思います。
事実3:イースト菌は化学的に作られた添加物ではない
イースト菌は人工的に培養されてはいるものの、元々は自然界に存在する菌に糖蜜や麦芽を与えて育てただけです。
よって化学的に生み出された「食品添加物」ではありません。
イースト菌を購入したことがある人の多くは「ドライイースト」「インスタントドライイースト」と呼ばれるタイプを使っていたかと思います。
見た目はサラサラしてコンソメの顆粒みたいですが、生きた酵母なんですよ。
生のイーストは少しねっとりとした粘土質の塊なんですが、これを乾燥させて使いやすくしたものが「ドライイースト」「インスタントドライイースト」です。
乾燥させることでイースト菌が半年くらい保つようになりますし、水分を与えるだけで使えるようになるので、扱いやすい点も魅力なんですよね。
事実4:イースト菌も広義では「天然酵母」の一種である
世間では、イースト菌と天然酵母は違うものだと分けて捉えがちなんですが、どちらも天然の酵母を培養したものなので変わりありません。
そもそも、「天然酵母」なんて呼び方をするのは日本だけってご存知ですか?
世界的には酵母で統一されているんですが、なぜか日本では「天然酵母」とありがたがって呼ぶ文化が根付いているようです。不思議ですね…。
なお、あえてカテゴリー分けをするならば、人工的に培養したイースト菌は「単一酵母」で、自家培養した酵母は「複合酵母」と呼ぶならば納得です。
特長 | 主な材料 | |
単一酵母 | 特定の酵母を人工的に培養したモノ。 製パン性に優れており、発酵力が強い。 |
出芽酵母 |
複合酵母 | 自然界に存在する多種多様な酵母を時間をかけて自家培養したモノ。 使う材料次第で複雑な味わいを生み出すことができる。 |
果実、ドライフルーツ、ハーブ、花びら |
複合酵母は「自家培養酵母」「野生酵母」と呼ばれたりもします。
材料と水さえあれば誰でも作ることはできますが、10日前後かかるのでじっくり仕上げていく必要がありますね。
酵母作りに興味があるという方は「レーズン酵母の作り方」を実践しつつ記事にまとめていますので、よかったら覗いてみてください。
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天然酵母作りに挑戦しよう【素人でも失敗しないレーズン種の作り方】
続きを見る
事実5:自家培養した酵母がイースト菌より身体に良いはウソ
酵母を自家培養した方が自然食っぽくて身体に良いって思いがちですが、健康面に与える影響は皆無ですね。
自家培養した酵母の魅力は「味わい」や「風味」にオリジナリティを出すことができる点であり、栄養価を高めるような効果はありません。
結局のところ「天然酵母が身体に良い」みたいな先入観が影響しているのだと思いますが、健康のために自家培養した天然酵母のパンを選ぶというのは意味が無い行為だといえますね。
イースト菌は「箱入り娘」で、自家培養酵母は「仲良し家族」みたいなもんですかね。
自家培養酵母とイースト菌で作ったパンの違いとは?
記事内でイースト菌は大量生産に向き、自家培養酵母は独特の味や風味を表現できるとお伝えしていますが、せっかくなので具体的に自家培養酵母とイースト菌を使って作るパンの違いを解説しちゃいます。
イースト菌を使うメリット・デメリット
まずはイースト菌のメリットからお伝えしていきます。
冒頭で説明しているので繰り返しにはなってしまいますが、イースト菌はパン作りに適した菌のみを厳選して培養しているので、発酵力が高くてパン生地を短時間で膨らませることができます。また、味や風味が一定でブレが無く、作り方や材料を変えない限りは同じ味のパンを焼き続けることが出来るでしょう。
特に短時間で大量のパンを焼きたいパン工場やパン作りに失敗したくない初心者には最適です。
イースト菌のメリット
・発酵が早い(大量生産しやすい)
・成形しやすい
・風味が単一(安定して作れる)
そんなイースト菌にもデメリットがあります。安定したパン作りができる反面で個性が出せないんですよね。
単一酵母なので、味や風味が単調になりがち。個性的なパンを焼いてみたい人には向いていません。他にも「独特のイースト臭がパンに残りやすい」「パンの劣化が早い」などが挙げられます。
イースト菌のデメリット
・味や風味が単調
・イースト臭が残ることがある
・焼き上がったパンの劣化が早い
自家培養酵母を使うメリット・デメリット
自家培養酵母を使ったパンは、イースト菌とは逆に「個性豊かな味と風味を楽しめるパン」に仕上がります。
数多くのパン屋さんで自家培養した酵母が好まれている理由はココにあるわけです。個性出せないと飲食業界はつらい時代ですからね。
その他のメリットとして、自家培養酵母を使ったパンは保水性が高くて「日にちが経っても味が劣化しにくい」という特長もあります。
自家培養酵母のメリット
・味に個性を出すことができる
・風味に個性を出すことができる
・劣化しにくい(日持ちする)
逆に自家培養酵母は手作りするところから始める必要があるので、パンを作り始めるまでに時間がかかります。
例えば、レーズンを使って酵母を作る場合、液種作りに7日・中種作りに3日で【合計10日】も必要です。やることは単純なので難しくはないんですが、イーストはお店で買ったその日に使えるので圧倒的に「楽」ですね。
その他のデメリットとして、自家培養酵母は複数の酵母の集合体であることから発酵力が弱く、イーストを使ったパンと比べると同じ時間で半分しか膨らまなかったりします。
自家培養酵母のデメリット
・酵母作りに時間がかかる
・発酵力が弱い(長期低温発酵を推奨)
・成形が難しい
イーストと自家培養酵母は相反する特長をもった酵母。一方が優れているなんてことは決して無いんですよ。
まとめ :イースト菌を知れば安心してパンが食べられる
パンに使われる酵母「イースト菌」は決して怪しいモノではございません。
元を辿れば自然界に存在する「天然酵母」なので、安心してパンを食べて大丈夫ですよ。
おさらい
- スーパーやコンビニのパンは「ほぼイースト菌」で作ってる
- イースト菌は人に有益な菌類です
- イースト菌と自家培養酵母に優劣はない
あなたの周りに「イースト菌は添加物」「天然酵母で作ったパンは健康に良い」って思っている人がいたら、そっと教えてあげて下さい。決してマウンティングしてはダメですよ。あくまで優しくです。
手作りパンでお世話になりっぱなしのイースト菌。
知れば知るほど「感謝しかない」って気持ちになりました。今後ともよろしく!
それでは、楽しいパンLIFEを!!