こんな方におすすめの記事
- 自宅でフランスパンを作ってみたい
- 何度バゲットを焼いても失敗する…どこを直せばいいか知りたい
- 専門店のフランスパンに少しでも近づきたい
こんにちは、パンシェルジュ兼パンブロガーのふくともです。
日本でも食パンと同じくらい人気のパンといえば「フランスパン」ですよね。硬い表面ともっちりした内面、2つの顔を持つフランス生まれの魅力的なパンです。
特に焼き立てフランスパンは感動モノ。甘い小麦の味とバリッとしたパンの食感は病みつきになります。そんなフランスパンを自宅で作ってみたいと思った経験一度はあるんじゃないでしょうか。
しかしながら、フランスパン作りは「最上級レベルに難しい」のです。まったくパン作り経験がない人だとレシピを見ただけで面倒で嫌になるかもしれませんし、いざ作ってみると「上手く成形できない」「どうみてもコッペパンだな…」みたいなことになったりします。なぜでしょうか?
当記事では、手作りパン歴3年の僕からフランスパン作りが難しい理由や、少しでも成功に近づけるためのコツをお伝えしていきます。
専門店レベルのフランスパン作りはさすがに伝授できませんが、家庭のオーブンレンジでもそれらしいパンを作ることはできますよ。ぜひ、一緒に挑戦してみましょう。
フランスパン作りが難しい理由は?
フランスパン作りが難しい理由はいくつかありますが、大きく分けて3つの要因が考えられます。
3つの要因
- 設備面:オーブンレンジの性能
- 材料面:使う小麦粉、配合する素材
- 技術面:発酵方法や成形、焼き方
順番に解説していきますので、ご覧ください。
設備面:オーブンレンジの性能が足りない!?
フランスパンの特徴として、バリッと硬い表面(クラストと言います)と、もちもちしてみずみずしい内面(クラムと言います)がありますよね。これを再現するためには、高温で一気に水分を蒸発させる必要があります。この高温で一気に焼くのが家庭用オーブンだと難しいのです。
家庭用の【電気オーブン】は内部の熱が逃げやすくオーブンのドアを開け閉めするだけで内部の熱が逃げてしまいます。対してプロがお店で使う【ガスオーブン】は、簡単に温度は下がりません。
また、電気オーブンは内部ファンの影響でパン生地が乾燥しやすく、クープ(切れ込み)が思うように開かないといった弱点もあるんです。
材料面:使う小麦粉は慎重に選ぼう
フランスパンの材料はとてもシンプル。基本的に小麦粉、酵母、塩、水の4つだけで作ります。
つまり素材の善し悪しがダイレクトにパンに出るってわけです。
例えば、スーパーで売っているような食パン用小麦粉(強力粉)で、理想的なフランスパンに仕上げるのは難しかったりします。理由は、フランスパンに使われる小麦粉と性質が違うからですね。
日本で売られている強力粉は、食パン作りに適したたんぱく質が多めの小麦から作っています。こういった強力粉は、もっちりと柔らかいパン作りに向いてますが、フランスパンのようなハードブレッドには不向きです。
一般的にフランスパンには「準強力粉」と呼ばれるたんぱく質量が少ない小麦粉で作ります。家にある強力粉ならどれでも良いわけでない点に注意しなければなりません。
技術面:水分量の多いパンは扱いづらい
設備や材料は工夫次第で解決できますが、ここが一番問題です。
そもそもフランスパンは作る工程が他のパンと比べて圧倒的に難しいです。
ここが難しい
- パン生地の水分が多く扱いづらい
- 発酵に時間がかかる(24時間寝かせたりする)
- ベタベタしていて形を整えにくい
- クープ(切れ込み)を入れるのがムズい
とにかく「パン生地が扱いにくい」の一言に付きます。
フランスパンは水をたくさん使います。食パンだと小麦粉に対して水が55~65%の割合だとすると、フランスパンは70~80%くらい入れますね。水分が多いということは、ゆるくてベタベタしたパン生地になります。このパン生地がとにかく慣れないと扱いにくいんです。
少し手で触っただけで引っ付いて離れませんし、自分の重みに耐えられずに形が崩れたりします。これをキレイに成形するのは本当に至難の業なんですよ。
パン職人の皆さんは多くの時間をパン作りに費やして修行してきたからこそ、理想的なフランスパンを作り出すことができます。こればっかりは経験がモノを言うので、最初は上手くいかなくて当たり前。何度も何度も作って慣れるしかありません。
フランスパンの作り方をざっくり解説
フランスパンを作る流れを簡単にご説明します。なお、発酵時間が長いので完成に2日かかります。
バゲットの作り方
- ボウルの中で材料を混ざる
- ゴムベラを使って軽くこねる
- 室温で60分発酵(予備発酵)
- 冷蔵庫で16~24時間発酵(1次発酵)
- 分割および成形
- 室温で30分発酵(2次発酵)
- クープ(切れ込み)を入れる
- 天板とパン表面に霧吹きする
- オーブンで焼く
超ざっくりですみません。個人的にわかりやすいと思った記事のリンクを掲載しますので、詳しくはそちらを参考にしてもらえると助かります。
フランスパンがシンプルな材料なのに風味豊かな味になる秘密は、この発酵時間の長さにあります。
時間をかけてゆっくり発酵させることで、酵母がアルコールや酢酸などを生み出して複雑な味わいを再現してくれるのです。これは使う酵母や粉によって結構違いが出ます。面白いですよね。
ご家庭でフランスパン作りを成功させるためのポイント
フランスパンはとても作るのが難しいパンなのですが、いくつかのポイントを意識しながら作ることでグッと成功率は高まります。
僕なりにフランスパン作りを成功させるコツを整理してみましたので、参考にしてみてください。
フランスパンに合った材料を使う
まずは揃える材料から吟味していきましょう。
普段からパン作りをされている方であれば、家に食パン作りで使った強力粉があるかもですが、フランスパンにはタンパク質が少ない「準強力粉」が適しています。
準強力粉はお近くのスーパーだと売ってない無いかもしれません。そんな時は富澤商店やカルディのオンラインショップを活用しましょう。僕も毎度お世話になってます。
フランスパン生地をこねすぎてはいけない
強力粉をしっかりとこねていくとグルテンと呼ばれる膜が形成されます。これがパン生地の土台となるわけなんですが、フランスパンはグルテンをしっかりさせてはいけません。要するにゆるい土台のまま作り終えることが必要なんです。
グルテンをしっかりさせると内側の白い部分(クラム)がぎゅっと詰まった柔らかい仕上がりになるからです。食パンやバターロールをイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれませんね。
逆にフランスパンのようなハードブレッドは、グルテンの繋がりを弱くすることで独特のサクッとした端切れのよい食感を生み出すことができるんです。
なお、グルテンは強力粉のたんぱく質の量が多いほど繋がりやすくなります。なので、たんぱく質が少ない【準強力粉】が良いというわけなんです。理にかなってますよね。
こねる時は手ではなく、ゴムベラを使う
ゴムベラ(シリコンベラ)は、以下のようなやつです。
パンのこね方は「手ごね」「ホームベーカリーでミキシング」などありますが、フランスパン作りは基本的にボウルの中でざっくりこねて終わりです。これもグルテンをしっかり繋がないようにする工夫なんです。
なので、手ではなくゴムベラでこねるのが効率的。
混ぜ方はボウルの中のフランスパン生地の下にゴムベラをもぐり込ませて上に持ち上げるようなイメージ。これを時計回りに何度も繰り返します。
ガス抜きはしないで良い
パン生地は発酵する際、内側に炭酸ガスの気泡が生まれます。食パンなど作る時はこれをしっかり潰して発酵を促すわけですが、フランスパンはガス抜きしてはいけません。
ガス抜きしないことで、以下のようなメリットが生まれるからです。
ガス抜きしないメリット
- 気泡が風味や食感を生み出してくれる
- パン生地が傷まない
サクッと軽いバゲットは、よくよく断面を見ると気泡がたくさんあることに気づくと思います。この気泡を意図的に残すことで小麦の風味が引き立たせてくれるわけなんですね。
そもそも発酵力が弱い生地なので、気泡を抜いても全然膨らみません。単純に形が崩れてしまうだけなので、逆効果なんですよね。
打ち粉をしっかりしよう(ケチってはダメ)
とにかくフランスパン生地は、水分量が多くブヨブヨしてゆるいです。ゆえに作業台や手にくっつきやすいので触る時や移動させる時は特に注意が必要。
慣れないうちは、この扱いにくさにイライラさせられるかもしれませんが、打ち粉(材料と同じ小麦粉)を駆使すれば解決します。
打ち粉は、分割や成形時に作業台やパン生地の表面、手に付けて使います。そうすることで、パン生地の表面の水分だけを打ち粉が吸い取ってくれますので、くっつきにくくなります。
霧吹きで生地の乾燥を防ごう
焼く直前にフランスパン生地と天板に霧吹きで水を吹きかけておきましょう。
なんで霧吹きをするのかというと、焼いた時に生地の表面が硬くなるのを少しでも遅らせるためです。
フランスパンは高温で焼くので表面部分はあっという間に焼けて硬くなりますが、内側はゆっくりと火が通り膨らんでいきます。つまり、外側があまりに早く硬くなってしまうと、生地が膨張しきれずに形が崩れたり、変な穴が空いたりするんです。
少しでも見た目を良くしたいなら、面倒でも霧吹きでしっかりと湿らせておくようにしましょう。なお、ご家庭のオーブンにスチーム機能がある場合、機械に任せてしまっても良いですが、軽く吹きかけておくと安心ですよ。
色々な製法を試してみる
フランスパンは材料こそシンプルですが、実は様々な製法が考案されています。
いくつか有名な製法をご紹介していきますので、ご覧ください。
パン作りの製法
- オーバーナイト製法(長期低温発酵法):冷蔵庫で16~24時間かけて発酵(熟成)
- パートフェルメンテ製法(老麺法):発酵用の生地を途中で加えて作る
- ポーリッシュ法:液状の発酵種を加えて窯伸びをよくさせる
- オートリーズ:粉と水と水和(なじませる)させてから酵母を加える
長くなってしまうので具体的な説明は割愛しています。興味がある方はご自身で検索してみてください。
最初からあれこれやると混乱するので、まずは基本となる【オーバーナイト製法】でトライするのがおすすめです。慣れてきたら色々な製法を試してみてください。
長期発酵には【野菜室】を使う
フランスパンの美味しさの秘訣はじっくりと低温で時間をかけて発酵させる点にあります。これをオーバーナイト製法と言います。
オーバーナイト製法では、生地の発酵力を弱めるために低温の場所が必要。要するに冷蔵庫なんですが、特に最適な場所が【野菜室】です。
低温発酵に最適な温度は【6~10℃】なんですが、この温度は野菜室がピッタリ当てはまります。ただし、冷蔵庫の設定で冷たくなっている可能性もあるので、使う前に確認しておくと良いでしょう。
オーブンレンジの性能を上げる
焼く時にどうしてもキレイに仕上がらない…こればっかりは努力では解決できない問題かもしれません。原因は作り方ではなく、オーブンの性能不足である可能性が高いからですね。
家庭用オーブンレンジでフランスパンをキレイに仕上げるためには、以下の性能が求められます。
求められる性能
- 高火力をキープできる
- スチーム機能が付いている
- 庫内に十分な広さがある
上記の性能を満たせていないオーブンレンジでは、仕上がり具合は妥協せざるを得ません。
焼き色は少し薄くなるでしょうし、クープを入れた部分はキレイに開かないかもしれないですね。とはいえ、正しい製法で作れていれば味は悪くないと思いますよ!
我が家のオーブンレンジも上記の性能をまったく満たせていないので、クープした部分はのっぺりしたままで、焼き色にもムラがありますが、味は抜群においしいです。家庭内消費だったらこれで十分かなと。
もう少し仕上がりを良くしたいという方は、パン焼きに特化したオーブンレンジを揃えるしかありません。過去に大手メーカーのオーブンレンジを徹底比較しておりますので、よかったら参考にしてみてください。
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【2024年版】パンを焼く目線で語る!オーブンレンジ徹底比較&おすすめ紹介
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パン作りの本で手順をしっかり学ぶ
最初はネット調べたり、独学でやってみるでまったく問題ないですが、バゲット作りの難しさに挫折したり伸び悩みを感じる時が来るかもしれません。
そんな時は、バゲット作りの参考になる書籍からヒントをもらうとスッキリします。
僕がとても参考になったなと思う2冊の本をご紹介します。
どちらも素晴らしい本ですが、「パンづくりの失敗と疑問をスッキリ解決する本」の方が作りやすいレシピで紹介してくれています。
逆に「家庭のオーブンで作るバゲット」は、本格的なバゲットを家庭で作るための超実践的ノウハウが記されています。全ページ「フランスパンだけ」という硬派な本ですが、すごく勉強になりました。
パン作りの経験値を貯めるべし
とにかく何度もフランスパンを作って感覚を掴むこと。結局、コレが何よりも大切だったりします。
水分が多く扱いにくいフランスパン生地は、実際に作りながら力加減や触り方を学んでいくしかありません。陶芸やそば打ちと同じ感覚かな?と個人的に思っています。
最初は生地がベタベタして嫌になることもあるでしょう。僕も手にびっしりと生地がまとわりついて成形に苦労して泣きたくなる時もありました。でも、結局慣れてしまえばどうということありません。
最初は形が悪くたっていいんです。何度も何度もとにかく楽しみながら挑戦すれば上達するので、諦めずに頑張りましょう。
フランスパン作りは難しさも含めて楽しもう!
フランスパン作りは難しい反面、成功した時の喜びも段違い。
特に焼き立てパンを丸ごとかぶり付いた時の香りと味わいは格別ですね。幸せ過ぎる。
食パンのようなソフトで弾力のあるパン作りに慣れている人は、あまりの違いに抵抗があるかもしれません。このあたりは別物と捉えるようにし、初心に帰ってじっくり流れを覚えるような気持ちで挑戦するようにしましょう。
少しでも当記事のノウハウがお役に立てば幸いです。なお、個別にパン作りのお悩み相談も受けますので、気軽に問い合わせフォームよりご相談ください。
それでは、楽しいパンLIFEを!!